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きくにんぎょう

菊人形

宮本 百合子

「大衆クラブ」1948(昭和23)年第9号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,991 字 · 16 页

青空文庫

名のとおり日本服を改良して、洋装との間にしようとした改良服は、上を、つつ袖の口をひらひら飾りにし、うち合わせ襟で、スカートの部分とくっつけたワンピースだった。スカートは袴の伝統をもって、きちんとたたんで襞をつけられ、バンドのうしろは袴腰の趣味で白細紐の飾りつきだった。

わたしには、メリンス絣の改良服が一つあった。その頃新小説に梶田半吉という画家のかいた絵が口絵にあって、肩の上に髪をたらした若い改良服の女がバラの花に顔をよせている絵があったりした。母は、自分のために改良服よりもっとハイカラと思われた一組の洋装をこしらえた。今思えば、白いレース・カーテンのような布地をふわり長くこしらえて、カフスのところとカラーのところが水色の絹うち紐でしぼられ、その紐が飾り房としてたれていた。その服を着て、海老茶色のラシャで底も白フェルトのクツをはいた二十九歳の母が、柔かい鍔びろ経木帽に水色カンレイシャの飾りのついたのをかぶって俥にのって出かけたとき、三人の子供たちと家のものとは、美しさを驚歎してその洋服姿を見送った。若い母は、ロンドンにいる良人のもとへその洋装姿の写真をおくった。