轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
「何もこんな私の眼つきはいま始まった事ではない。娘の時分から、死んだ母などにも何かと嫌がられたものだけれど、あの人は漸っといまこれに気がついたのかしら。それとも今までそれが気になっていても私に云い得ず、漸っときょう打解けて云えるようになったのかしら。何だかゆうべなどはまるであの人でない見たいだった。……だが、相変らず気の小さなあの人は、汽車の中でこんな嵐に逢ってどんなに一人で怖がっているだろう。……」
一晩じゅう何かに怯えたように眠れない夜を明かした末、翌日の午近く漸く雲が切れ、一面に濃い霧が拡がり出すのを見ると、ほっとしたような顔をして停車場へ急いで行ったが、又天候が一変して、汽車に乗り込んだか乗り込まないかの内にこんな嵐に遭遇している夫の事を、菜穂子は別にそう気を揉みもしないで思いやりながら、何時かまた窓硝子に描かれたようにこびりついている一枚の木の葉を何か気になるように見つめ出していた。そのうちに、彼女はまた自分でも気づかない程かすかに笑いを洩らしはじめていた。……
その同じ頃、黒川圭介を乗せた上り列車は、嵐に揉まれながら、森林の多い国境を横切っていた。