轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
「まあ綺麗な虹だこと……」思わずそう口に出しながら私はパラソルのなかからそれを見上げた。森さんも私のそばに立ったまま、まぶしそうにその虹を見上げていた。そうして何だか非常に穏かな、そのくせ妙に興奮なさっていらっしゃるような面持をしていられた。
そのうち向うの村道から一台の自動車が光りながら走って来た。その中で誰かが私たちに向って手をふっているのが認められた。それは森さんのお車に乗せて貰って来たお前とお隣りの明さんだった。明さんは写真機を持っていらしった。そうしてお前が耳打ちすると、明さんはその写真機をあの方に横から向けたりした。私は叱言も言えずに、はらはらしてお前たちのそんな子供らしいはしゃぎ方を見ているよりしようがなかった。あの方はしかしそれにはお気がつかないような様子をなすって、すこし神経質そうに足もとの草をステッキで突いたり、ときどき私と言葉を交わしたりしながら、お前たちに撮られるがままになっていられた。
それから三四日、午後になると、一ぺんはきまって夕立がした。夕立はどうも癖になるらしい。その度毎に、はげしい雷鳴もした。私は窓ぎわに腰かけながら、楡の木ごしに向うの雑木林の上にひらめく無気味なデッサンを、さも面白いものでも見るように見入っていた。