轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
自分さえもっと年をとってしまい、そうしてもう女らしくなくなってしまえたら、たとえ何処であの方とお逢いしようとも、私は静かな気もちでお話が出来るだろう。――しかし今の私は、どうも年が中途半端なのがいけないのだ。ああ、一ぺんに年がとってしまえるものなら……
そんなことまで思いつめるようにしながら、私はこの日頃、すこし前よりも痩せ、静脈のいくぶん浮きだしてきた自分の手をしげしげと見守っていることが多かった。
その年は空梅雨であった。そうして六月の末から七月のはじめにかけて、真夏のように暑い日照りが続いていた。私はめっきり身体が衰えたような気がし、一人だけ先きに、早目にO村に出かけた。が、それから一週間するかしないうちに、急に梅雨気味の雨がふりだし、それが毎日のように降り続いた。間歇的に小止みにはなったが、しかしそんなときは霧がひどくて、近くの山々すら殆んどその姿を見せずにいた。
私はそんな鬱陶しいお天気をかえって好いことにしていた。それが私の孤独を完全に守っていて呉れたからだった。一日は他の日に似ていた。ひえびえとした雨があちらこちらに溜っている楡の落葉を腐らせ、それを一面に臭わせていた。