轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
「此の小屋は一体何んですか?」と問うて見た。
娘はしかし何んだかもじもじしているばかりで、なかなか返事をせずにいた。
「普通の納屋でもなさそうだけれど……。」明はもうすっかり目が馴れて来ているので小屋の中を一とあたり見廻した。
そのとき娘が漸っとかすかな返事をした。
「氷室です。」
まだ藁屋根の隙間からはぽたりぽたりと雨垂れが打ち続けていたが、さすがの雨もどうやら漸く上りかけたらしかった。いくぶん外が明るくなって来た。
明は急に気軽そうに云った。「氷室と云うのはこれですか。……」
昔、此の地方に鉄道が敷設された当時、村の一部の人達は冬毎に天然氷を採取し、それを貯えて置いて夏になると各地へ輸送していたが、東京の方に大きな製氷会社が出来るようになると次第に誰も手を出す者がなくなり、多くの氷室がその儘諸方に立腐れになった。今でもまだ森の中なんぞだったら何処かに残っているかも知れない。――そんな事を村の人達からもよく聞いていたが明もそれを見るのは初めてだった。
「なんだか今にも潰れて来そうだなあ……。」明はそう云いながら、もう一度ゆっくりと小屋の中を見廻した。