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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

「週刊朝日」1947(昭和22)年6月22日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 页

青空文庫

側用人はむずかしい役で、どう勤めても悪くいわれやすい。藩主と重臣の間に立つから、些細なことでもすぐ批判のたねになる。肉躰的にも精神的にもつねに負担が大きく、よほど健康で頭がよくなければ勤まらなかった。

側用人になったとき、彼は名を頼母と改め、長男の小太郎に計之介をなのらせた。彼はその役をみごとに勤めた。江戸でも国許でも評判は上々で、特に藩主の信任が篤く、しばしば褒賞されて刀や衣服を賜わった。そうして四年、いよいよ国老になるときが来ると、彼は躯の不調を理由に退職の願いを出して、家中の人たちを驚かした。

城代家老は殆んど終身であるが、江戸と国許を通じて、次席以下四人の家老は五年が任期になっており、一人は中老から選ばれるのである。ちょうどその中老の交代する年になって、頼母は退職願いを出したのであった。周囲の者も思いとまるように云い、藩主からも特に慰留の沙汰があったが、彼はどうしても辞意をひるがえさなかった。

――躯の調子が悪いので、このままでは充分な御奉公ができない、将来お役に立つためにも、二三年お暇を頂いて健康をとりもどしたい。

こう云ってついに職をしりぞいてしまった。