轻松读懂日语经典作品
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あしはみていた
葦は見ていた
山本 周五郎
「週刊朝日」1947(昭和22)年6月22日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 页
五
彼は松野に無断で、家にある書画やめぼしい道具を売った。
松野は怒った。父の代から仕えていて、温和しい一方の、忠実で勤直な彼が怒った。
――私はお暇を頂きます。
松野はふるえながら云った。計之介は勝手にしろと云った。
――その代りなにも云うな。
松野はなにも云わなかった。松野は意見らしいことはなにも云わずに、妻と二人で出ていった。そして、計之介は一人になった。
「おれが松野にそうしろと云ったのだ」と東次郎が云った、「そうして暫くようすをみるがいいと」
「いまになればわかるが、あのときは頭が狂っていた」と計之介は云った、「よし、それならこっちもゆくところまでいってやれ、どうなるものか、――」
そうして彼は女を自宅へ引取った。
五
二人だけの生活が始まった。
それは激しい消耗の生活であった。男は世間から棄てられた怒りと絶望とを、女と歓楽に溺れることで忘れようとし、女は男をそんな境遇に追いこんだ自責から、もっと深い快楽を男に与えることで償おうとした。たしかに、計之介にはそう思われた。女の飽くことを知らないような求めや、焦燥や、強烈な歓喜と陶酔の表現は、しだいにその度を高め、昂進するばかりであったが、同時に(どんなに狂的な快楽のなかでも)いつも罪の呵責と赦しを乞う涙をともなっていた。