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じゃせいのしゅうねん

蛇性の執念

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页

青空文庫

またよく見直しますとちっとも似た処のない、醜い武雄の顔になってしまいます、文夫は死にはしないんだと、ふと私は思いました。この家のどこかにいて私を守っててくれるんだ、という気がしたんですの、それでこの家を離れることも、武雄の傍を離れることも出来なかったんです。淋しかったんですわ。それが私と武雄と結婚させてしまうような原因となったんですの、でも妙じゃございませんか。ほんとに妙なお話ですが、結婚して後は、今までただ嫌いだった武雄が、今度は憎くさえなってきましたの、嫌いな人でも結婚すれば、そこにまた新らしい愛情が湧くように申す人もありますが、あれは嘘でございますわ、私のような場合から考えますとね、いまでは武雄を敵のように憎みます、憎くって、憎くってたまりませんの。その反対に文夫に対する愛情は益々深くなって、恋しくてたまりません。でも悲しいことにはこの頃は、もう武雄のどこからも、文夫の面影を見出すことは出来なくなりました。まぼろしは結婚と同時に消えてしまったんでございます。きっと文夫も私に対して快からず思っているのじゃないかと思います。たとえ武雄の計略にのったのだといっても私はまあ何という軽卒な真似をしてしまったんでしょう、今更取り返しはつきませんが、考えると口惜しいやら、情ないやら、自分で自分に愛想がつきてしまい