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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页
現場を見た人もあり、只今もそう信ぜられて居ります。
ところが、弟様が二度目に大奥様を強迫に入らした時に、兄様殺しを白状遊ばしたのだそうでございます。その時も、例の黒蛇をお持ちになっていらして、仇はこいつじゃ、こいつじゃと仰しゃり、顛末をお話しになったそうでございます。
それによりますと大旦那様をおすすめになって断崖にお立たせになり、数間隔った処で弟様は御冗談を仰しゃって人々の目を御自分の方へ集めさせ、こっそりと黒蛇を放したら、案の定、大旦那様の首筋に噛みつき、そのために倒れて谷底にお落になったのだそうでございます。幸か不幸かお顔がめちゃめちゃに砕けたので分らなくなりましたが、そうでなかったら、変色の点で疑問が起されたかも知れません。こんなお話をして弟様はグングン大奥様を脅かし殆んどお気を失いかけていらっしゃるのをいい事にし、これからはお嫂様と御木井家が欲しいんだそれにはこれが邪魔になると仰しゃって、文夫様を指したそうでございます。
大奥様は急に我に帰り、「どう遊ばすんですか?」とお訊きになりましたら、これには黒蛇まで使う必要はないとせせら笑って仰しゃったそうで、大奥様は文夫様と聞いて始めて俄かにお強くおなりになりました。