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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

ほほう、そうですか。いやそれは僕も愕きましたよ、ほほう」

蠅男の正体?

鴨下ドクトルが八日目にひょっくり、奇人館に帰ってきたという知らせである。

帆村の愕きもさることながら冷静をもって聞えるあの村松検事でさえ、その愕きを電話口に隠そうとさえしなかったほどだ。検事は、鴨下ドクトルが再び館にかえって来ないと断言したくらいだから、ドクトル帰邸の知らせは全く寝耳に水の愕きだったのだろう。鴨下ドクトルは何処に行っていたのだろうか。

娘を東京から呼んでおきながら約束を破ってドクトルが旅行に出たのは何故だろう。

それからまた、ドクトルの留守中に、突然何者とも知れぬ男の屍体が焼かれ、機関銃手がとびだしたりしたことに果してドクトルは無関係だったのだろうか。

蠅男の脅迫状は、なぜドクトル邸の暖炉の上に置かれてあったのだろう。

そういう疑問のかずかずが、鴨下ドクトルの口から聞きただされる時機が来たのだ。ドクトルの答によって蠅男の正体はいよいよ明らかになるであろう。帆村探偵は大阪へ帰って、検事たちから聞くことができるであろうドクトルの告白に、非常な期待をおぼえたのであった。