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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
危機はだんだんと迫ってくるようである。
するとゴソリゴソリの音がパッタリ停った。それに代ってコトリという音が、もっとハッキリ聞えた。それは天井裏についている四角な空気抜きの穴のところで発したものだった。
そのうちに、なにやら黒いものが、その空気穴のなかから垂れ下ってくるのであった。それはだんだん長く伸びて、まるで脚のような形をしていた。そのうちに、また一本、同じようなものが静かに下って来た。どれもこれも、糸のようなもので吊り下げられているらしい。
腕のようなものが一本、それからまた一本! ズルズルとすこしスピードを増して垂れ下がってくる。
この奇怪な有様を、何にたとえたらいいであろう。もしこの場の光景を見ていた人があったなら、この辺でキャッといって気絶してしまうかも知れない。
――黒い外套のようなものが、フワリと落ちて来た。それにつづいて、穴からヌッと出てきたのは、意外にも人の首だった。見たこともない三十がらみの男の首で、眼をギョロギョロ光らせている。見るからに悪相をそなえていた。
その首はスーッと穴から下に抜けた。それにつづいて肩が出て来るのであろうか。