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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
「うむ、そうだった」と、何事かに思いあたったらしく彼は突然呟いた。「これはやはり、蠅男がこれまで通ってきた道を、はじめからもう一度探し直してみる必要がある。蠅男が最初名乗りをあげたのは何処だったか。それは無論鴨下ドクトルの留守中、その奇人館のストーブの中に逆さに釣りさげられていた焼屍体に発しているんだ。あのとき蠅男は、新聞紙を利用した脅迫状に、はじめて(蠅男)と署名をしたのだった。第二の犠牲者は玉屋総一郎、第三の犠牲者は塩田元検事と、ちゃんと身柄が判明しているのに、ああそれなのに奇人館に発見された焼屍体の身許が今日もなおハッキリしていないのは変ではないか。すべて連続的な殺人事件には、必ず何か共通の理由がなければならぬ。蠅男はなぜ三人の人を殺したか。そうだ。その殺人の理由は第一の犠牲者の身許がハッキリさえすれば、ある程度解けるにちがいない。うむ、よオし。それを知ることが先決問題だ。では、これから奇人館に行き、鴨下ドクトルに逢って、手懸りを探しだそう」
帆村珠偵は、何かに憑かれた人のように血相かえて立ち上ると、それを心配して引きとめる糸子の手をふりはらって、外へとびだした。