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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
蠅男は鴨下ドクトルに化けて洗面所に入ると見せ、すぐさまその窓から法曹ビルの外壁を、あの巧妙な鉄の爪でもって匍いのぼり、窓の外から塩田先生の頭蓋骨に用意の文鎮を発射したことが判明したのだった。村松検事は、帆村の顔を見るや走りよって固い固い握手をした。それは冷静を以て聞える村松検事にしては、先例のない昂奮状態であった。帆村も強くその手を握りかえし、
「さあ、村松さん。ぐずぐずしてはいられませんよ。蠅男は想像以上に恐ろしい奴です。亡き鴨下ドクトルも、万一蠅男が市中にとび出したときには、その卓越した頭脳力をもって、どんな狂悪極まる暴行をするかしれないと云っています。あの右手左手の機関銃やなんかのカラクリも、蠅男がドクトルに隠れて作りあげたものに相違ありません。さあ、われわれは一刻も早く、市民の安全のために、恐るべき蠅男を捕えなければなりません」
「そうだ」と村松検事も警官隊の方をふりむき、「蠅男の恐るべき正体はようやく分ったが、蠅男は毒牙を磨いて、暴行の機を狙っているのだ。彼奴を捕えてしまわないうちは、われわれは枕を高くして眠れないのだ。さあ、こうなったら決死の覚悟で、直ちに蠅男狩りを始めるんだ!」