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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

「そうだ。そのとおりだろう。蠅男は孤立した殺人魔だ。ギャング組織ではないと思う」

「それなら正木さん」と帆村は署長の方をふりむき、「僕は蠅男が依然として、鴨下ドクトル邸に出入しているのじゃないかと思いますよ。爆弾は、あの邸内のどこかに隠してあるのでしょう」

「そんなこと不可能だすな」と署長は不服であった。「警戒は屋内屋外にあって厳重にしとるのでっせ。そして邸には、ドクトルの遺児カオルはんと許婚の山治はんが、無事に暮しとりますんや。もし蠅男が入りこんだのやったら、どこかで誰かが見つける筈だすがな」

「いや、この爆弾を見ては、僕はどうしても蠅男が、ドクトル邸の秘密倉庫なんかに出入しているとしか考えられんです」

「秘密倉庫? そんなものが、どこかに拵えてありますのか」

「もちろん僕の想像なんです。なお僕は、この小包を見て考えました。蠅男は、あまり遠くへいっていないということです」

「それはまた、なんです」

「小包の消印を見ましたか。あれは郵便局で押したものではなく、手製の胡魔化しものですよ。だからあの小包を持って来た郵便局の配達夫というのは、恐らく蠅男の変装だったにちがいありません。