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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
帆村にとっては、甚だ迷惑なことであった。そんなことよりも、早く蠅男の所在を探したいのだった。だが親分さまからの折角の下され物である。行かねば、後の祟りの恐ろしさも考えねばならない。やむなく帆村は、その新別府温泉プールなるものに、楢平とともにでかける決心をした。
だが、まさか其処に、たいへんなものが待ち構えていようとは、ついぞ気がつかなかったのである。
砂風呂の異変
楢平と帆村とは、恐る恐るその新別府温泉プールの入口へ切符を出してみた。
プールでは、なんと思ったか、たいへん鄭重に二人の入来を感謝してくれた。それも一に藤三親分の偉力のせいであろうと思われた。
裸になって浴場へ足を入れてみると、なるほどこれは、入浴ずきの大阪人でなければ、ちょっと出来そうもない広大なる共同浴場であった。その中央に、大理石で張りめぐらされた直径十メートルの円形のプールが作ってあった。そのまわりも広い大理石の洗い場になっていて、そこに二、三人の人たちが広々と両手両足をなげだして、湯にのぼせた身体をひやしていた。
「どこが新別府なんだろう。プールは別に別府らしくも何ともないじゃないか」