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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
そのとき検事と署長とは、踏台の上に抱き合うようにして乗っていた。そしてしきりに総一郎の屍体を覗きこんでいた。
「――正木君。これを見給え、頭部の出血の個所は、なにか鋭い錐のようなものを突込んで出来たんだよ。しかも一旦突込んだ兇器を、後で抜いた形跡が見える。ちょっと珍らしい殺人法だネ」
「そうだすな、検事さん。兇器を抜いてゆくというのは実に落ついたやり方だすな、それにしても余程力の強い人間やないと、こうは抜けまへんな」
「うん、とにかくこれは尋常な殺人法ではない」
検事と署長は、踏台の上で顔を見合わせた。
「ねえ、検事さん。一体この被害者は、頸を締められたのが先だっしゃろか、それとも鋭器を突込んだ方が先だっしゃろか」
「それは正木君、もちろん鋭器による刺殺の方が先だよ。何故って、まず出血の量が多いことを見ても、これは頸部を締めない先の傷だということが分るし、それから――」
といって、検事は屍体の頸の後に乱れている血痕を指し、
「――綱の下にある血痕がこんな遠くまでついているし、しかも血痕の上に綱の当った跡がついているところを見ても、綱は後から頸部に懸けたことになる。