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けつえきがたさつじんじけん
血液型殺人事件
甲賀 三郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年6、7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,256 字 · 71 页
考え方によると、両博士は実に不幸な人達で、恰で互に競争する為に生れて来たようなものである。而も、その争いは武器を取って雌雄を決する闘争ではなく、暗黙のうちに郷里の評判や、学科の点数や、席次や、社会的地位を争うのだから、そこに不純な名誉心や嫉妬心や猜疑心が介在して来るから、本人達に取っては、非常に苦しいものだったに違いないと思う。
噂をして誤りなく、又私の推察が正しければ、この二人は、場合によっては名誉も権勢も生命も弊履のように棄てようという恋を争ったというのだから、実に悲惨である。三角関係にどんな経緯があったか知らないが、兎に角、笠神博士が恋の勝利者となり、毛沼博士が惨敗者となって、遂に一生を独身に送ることになったのだ。私はM高出身ではあるけれども、東京で生れ東京で育った人間なので、帝大に這入って初めて両博士に接し、そういう噂話を耳にしたのだが、爾来三年間に、親しく両先生の教えを受け、殊に笠神博士には一層近づいて、家族へも出入したので、今いった噂話が一片の噂でなく、事実に近いものであることは、十分推察せられていたのだった。
然し、両先生の口や、笠神博士夫人の口から直接聞き出した事ではなし、何の証拠もない事であるから、私は署長の質問に対して知らないと答えたのである。