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けつえきがたさつじんじけん

血液型殺人事件

甲賀 三郎

「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年6、7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,256 字 · 71 页

青空文庫

勝利者と惨敗者

理由もないのに、そんな事をいわれる筈がないと思いますがね」

勝利者と惨敗者

私が毛沼博士が死んだという事を聞いた時に、殺されたのではないかと思ったのは、別に深い根底がある訳ではなかったのだ。

前にもいった通り、毛沼博士の死が病死とは考えられなかったし、といって博士が自殺するという事は、それ以上に考えられない事だし、過失死という事も鳥渡思い浮ばなかったので、つい殺されたのではないかと口を滑らしたのだが、といって、全然理由がなかった訳でもない。先ず第一は毛沼博士が自動拳銃を持っていたということ、それから第二には博士が最近二三月何となく物を恐れる風があった事だった。

一体毛沼博士は、外科の教授に在勝な豪放磊落な所があって、酒豪ではあるし、講義もキビキビしていて、五十二歳とは思えない元気溌剌たる人で、小事には拘泥しないという性質だった。所が、この二三月はそんなに目立つ程ではないが、何となく意気消沈したような所があり、鳥渡した物音にもギクッとしたり、講義中に詰らない間違いをしたり、いつも進んでする手術を、態と若い助教授に譲ったり、些細な事ながら、少し平素と変った所があったのだ。