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けつえきがたさつじんじけん

血液型殺人事件

甲賀 三郎

「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年6、7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,256 字 · 71 页

青空文庫

「八時までも気がつかなかったのはどういうものでしょう」

「休日ですからね。それに前夜遅かったし、グッスリ寝ていたんでしょう」

説明を聞くと、十分あり得ることだ。現に知名の士で、ストーブの瓦斯漏洩から、死んだ人も一二ある。だが、私には毛沼博士の死が、どことなく不合理な点があるような気がするのだった。

「じゃ、過失と定ったのですか」

「ええ」

署長はジロリと私の顔を眺めて、

「大体決定しています。然し、相当知名の方ですから、念を入れなくてはね。それで、態々来て貰ったのですが、御足労序に一度現場へ来て呉れませんか。現場についてお訊きしたい事もあるし、それに君は法医の方が委しいから、何か有益な忠告がして貰えるかも知れない」

「忠告なんて出来る気遣いはありませんけれども、喜んでお伴しますよ」

私達は直ぐ自動車を駆って、毛沼博士邸へ行った。もう十時を少し過ぎていて、曇り勝な空から薄日が射していたが、外は依然として寒く、街路に撒かれた水は、未だカンカンに凍っていた。邸前に見張をしていた制服巡査は寒そうに肩をすぼめていたが、署長を見ると、急に直立して、恭々しく敬礼した。

寝室は死骸もそのまま、少しも手がつけてないで保たれていた。