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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「ギョですよ。先生。ギョギョッ」

バーテンは腹をかかえて大笑い。

「ビール二本のみますよ。罰金。冗談じゃないよ。銀座の女給だって、あんなハデな口説かれ方はしないね。バカバカしい」

金の泥沼

一

青木は放二の話をきき終り、長平が来ないことをたしかめると、うなだれて、蒼ざめた。ぶちのめされて、ゆがんだ顔からは、あえぐようにしか声がでないらしく、

「わがこと、終れり」

よくききとれない声であった。しかし、努力して顔をやわらげ、

「ぼくの顔に書いてあるだろ。お金を借りたかったんだ。百万ほど」

フッと溜息をもらして、

「ここの勘定も、実は長平さんを当てにしていたのさ。こうなると、お酒もノドを通らないね」

「ここの勘定ぐらいでしたら、ぼく、おたてかえ致しておきます」

「え? 君、そんなお金持かい」

「大庭先生からお預りしたお金ですけど、事情を申上げれば了解して下さると思います」

「君、どれぐらい、預ってる?」

青木は卑しげな顔色を隠さなかった。もう、泥沼へおちたんだ。藁一本、にがすものか。ノドからでも手をだしてみせる、という毒々しい決意が露骨であった。

しかしそれを見つめる放二の目はむしろいたわりの翳がさした。