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ふくめんのぶとうしゃ
覆面の舞踏者
江戸川 乱歩
「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页
私は、顎を撫でながら、さも平然と答えました。「どうだ驚いたか」という腹です。ところが、それには一向反響がなくて、相手から返って来た言葉は、実に奇妙なものでありました。
「だって、君の所のは、我々の内で一番新しいんじゃありませんか。お楽みでない筈はないや。ねえ、井関さん」
すると、井関さんは、それに答える代りに、アハアハと笑っているのです。どうも様子が変なのです。しかし、私は、ここで弱味を見せてはならぬと、さらに一層平気な表情を作るのに骨折りました。が、彼等は私の表情などには、一向お構いなく、ガヤガヤと話を続けるのです。
「だが、昨夜の趣向は確に秀逸だったね。まさか、あの覆面の女が、てんでんの女房たあ気がつかないやね」
「あけてくやしき玉手箱か」
そして、彼等は声を揃えて笑うのです。
「無論、最初札を渡す時に夫妻同一番号にして置いたんだろうが、それにしても、あれだけの人数がよく間違わなかったね」
「間違ったら大変ですよ。だから、その点は十分気をつけてやりました」井関さんが答えるのです。
「井関さんから予め旨を含めてあったとはいえ、女房連、よくやって来たね。あれが自分の亭主だからいいようなものの、味を占めて外の男にあの調子でやられちゃ、たまらないね」