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しんらんしょうにんについて

親鸞聖人について

吉川 英治

「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页

青空文庫

に、ピッピッピッとこまやかに書いております。生命力に満ちあふれたというような「お顔」です。

ところで、その親鸞の生まれた時代、あの九十年の生涯の世相は、どんなだったかをみてみましょう。

その没年の弘長二年から数えて聖人が呱々の声をあげた九十年前は承安の三年。平家の終わりごろですね。さしも栄えていた平家もそろそろ終わりごろ。聖人が九歳でしょうか、太政入道清盛も死んでいます。それから得度剃髪九歳までの間に、年号は安元、治承、養和と変わっておりまして、この間に木曾義仲の乱入、やがて平家都落ち、壇の浦、平家一族の没落というような歴史的な事件があります。

九歳から二十年、叡山におられたことになっておりますが、その二十年間の叡山はどうか。これは今日からは想像も及ばないほどの、いわゆる大なぎなたを持った僧兵という軍事力もあり、それから山門の上ではやはり、いろいろ時勢を反映して、今日のことばでいえば、右だ、左だの争いでした。

朝廷に何か自分たちの不満があれば、今日のデモ隊のごとく、あの叡山の雲母坂から都へ出てくる。こういう叡山の中で若き親鸞は九歳から二十九歳ごろまで、苦難な勉強をしていたのでしょう。