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しんらんしょうにんについて
親鸞聖人について
吉川 英治
「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页
ほんとうにそうです……。
このなかに、もしか仏門の方がおられたら、その方に聞いていただきたい。それは明治の初年の人でしょうか。三河の人で峨山和尚、この人は禅宗の人です。峨山和尚さんが、もうだめだ、命旦夕に迫ってだめらしいというときに『みな弟子ども、ここへ集めてくれ』といった。峨山和尚は古木のような身体を起きなおして、さて弟子どもにいったのはですね。『わしも、この年までに難行道禅をやってきた』というんです。『さとったつもりだ。ところがな、さて、そこまでお迎えがきてみるとな、なかなか死ぬっというのはつらいもんじゃぞよ』といったそうです。『なかなか死ぬちゅうんは、つらいもんじゃぞ、たいへんじゃぞよ。お前ら若い者は、勉強せーや』そういって、なくなったというんです。
禅宗の人といいますと、空間に徹したような見事な死に方をされますが、この和尚の死は変わっているな、と思いました。峨山和尚みたいな人でもそうかなと思いました。いわんや僕たち凡夫はですね、ああこら仕方がないんだと思ったら、たいへん気が楽になりました。そしてその峨山のことばを味わってみますと、結局はですね、峨山和尚は難行道を通ってきたわけでありますけれど、最後に弟子にいったことばは、それ自体意識しなくとも、易行道を、親鸞のいっていることばと一致してますね。