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しんらんしょうにんについて

親鸞聖人について

吉川 英治

「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页

青空文庫

ところが聖人は、そうではなかったらしいです。なお数年は、奥さんを持たれた跡はないんです。これは小説とは、だいぶ違ってしまうんです。行者宿報ということ、妻を持ったからには、ということにおいて、親鸞は、その間になにか非常に考えていたんじゃないでしょうか。性、セックス、実にこれはむずかしい問題ですね。

〔注〕「本願寺聖人絵伝」によると、建仁三年(一二〇三年)四月五日の夜、夢のなかに、六角堂の救世観音があらわれて「行者宿報にて、たとい女犯すとも、われは玉女の身となりて犯せられ、一生のあいだ、よく荘厳して、臨終引導して極楽に生ぜしめん」と親鸞に告げたという。

親鸞がそれほどに悩んだ性の問題ですが、今日、私たちの身辺、目にふれる活字、耳に流れてくるマスコミ、あらゆる面で、この性の問題は、実にぞんざいに扱われていますね。その結果はどうかというと、毎日、新聞でごらんのとおりいろんなことがでてくる。つい先ほども、こういう事件がありました。

東京の近くの、どこかの盛り場の女給さんが、愛人と同せいしていたが、男に別に縁談があって身を固めたいといい出した。するとその女給さん、三十万円を新宿の殺し屋にやってですね、それを殺し屋が何万かずつに分け、一番年下の十八歳の殺し屋は、たった二千円しかもらわなかったそうです。