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ちょうほうちゅうけいきょく

諜報中継局

海野 十三

「新青年」1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,537 字 · 40 页

青空文庫

5

そうじゃないか」

「なるほど。そういえばそうだな。惜しいことをした」

「もしもし、惜しいといえば、テイラー博士がさっき死去されましたよ」

「ええっ。テイラー博士が死去? ど、どうしたんですか」

「溺死です。あの奔流に流され、便所の脇で水中に没しました。気の毒な博士……」

「なんだ。それじゃテイクロトロンの研究は完全に台なしじゃないか。わが国の巨大なる損害!」

「ちぇっ、折角日本軍を叩きのめすに足る新兵器が出現したのになあ……」

この後は、録音なし。水勢はげしく、遂に地下室を破壊して、汚水が花壜録音器を濡したるため、機能停止したるものと思われる。

5

ナイトクラブに於て。

官能的な、あまりに官能的なジャズの音。そのジャズの中から会話がきこえる。

秘書カスリン「ええ、大統領閣下はお若い時から実に幸運の固まりのような方ですのよ」

その愛人「そうですかねぇ。プリストン大学のときも、三十分早く自動車があの町に着いていれば、どうしたってあの洪水で溺死していたわけです」

カスリン「いや、あたくしにとっては最大の不幸ですわ。これで近く秘書を辞職することになるでしょう」

愛人「ええっ。