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ていそうについて

貞操について

宮本 百合子

「婦人公論」1946(昭和21)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,541 字 · 11 页

青空文庫

すべての男たちが、自分たちの仕来りを考え、狩りのえものの分量を考え、それを女と二人で食って生活する小舎の暮しを思い、一対の弓矢ばかりが、そんなにいくつもの夜から朝へとかけられたままになっていることはあり得ないと判断した。そこで会議がひらかれて、小舎がしらべられた。そこで部落の人々が発見したのは何であったろう。部落のすべての人になじみの深かった男の一人と、女の一人とが互に抱きあったまま死んでいた。その小舎にはかじる一本の骨も一粒の穀物もなくなっていた。

これは、部落の風習にとって驚異であった。相手を選んでそれを離したくないと主張した一組の男女の死が見出された。十九世紀のヨーロッパ人である報告者は、かかる未開人の間においても、なお愛情が最後の決定をする場合がある、といっているのである。

人間の男女は、自然のままの表現としてはこんな発端で、愛情の永続を希う意志表示をして来た。そのような未開社会の男女の結合の間で、貞操などという言葉は思いつきもされなかった。同じくらいの好きさなら、同じぐらいいやでないならば、相手の男女が変ろうと、そのときどきの真心といつわりのない愛が示された。