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にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
生活を立てているという盛りの男の顔つきではない。やっぱしよたよたと酒ばかし喰らっては、悪遊びばかししていたに違いない」腹ではこう思っているのであった。こうした男にいつまでも義理立てしている嫁の心根が不憫にも考えられた。
「自家では女は皆しっかり者だけれど、男は自堕落者揃いだ。姨にしても嫂にしても。……私だってこれで老父さんには敗けないつもりだからねえ」……「向家の阿母さんが木村の婆さんに、今度工藤の兄さんが脳病で帰ってきたということだが、工藤でもさぞ困ることだろうと言ってたそうなが、考えてみるとつまり脳病といったようなもんさね。ヒヒヒ」
老父と耕吉とが永い晩酌にかかっていると、継母はこんなようなことを言っては、二人の気を悪くさせた。
どんなものが書けるのだろうと危ぶまれはしたが、とにかくに小説を書いて金を儲けるという耕吉の口前を信じて、老父はむり算段をしては市へ世帯道具など買いに行った。手桶の担ぎ竿とか、鍋敷板とかいうものは自分の手で拵えた。大工に家を手入れをさせる時も、粗壁に古新聞を張る時も、従妹を伴れては老父が出かけて行った。そしてそういう費用のすべては、耕吉の収入を当てに、「Gの通」