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にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
三
その代り俺の方で惣治からの仕送りを断るから、それでお前は別に生計を立てることにしたがいいだろう。とにかくいっしょにいるという考えはよくない」
気のいい老父は、よかれ悪かれ三人の父親である耕吉の、泣いて弁解めいたことを言ってるのに哀れを催して、しまいにはこう慰めるようにも言った。ことに老父の怒ったのは、耕吉がこの正月早々突然細君の実家へ離縁状を送ったということについてであった。その事件はまだそのままになっていたが、そのため両家の交際は断えていたのだ。
「何という無法者だろう。恩も義理も知らぬ仕打ではないか!」
老父は耕吉の弁解に耳を仮そうとはしなかった。そして老父はその翌朝早く帰って行った。耕吉もこれに励まされて、そのまた翌日、子のない弟夫婦が手許に置きたがった耕太郎を伴れて、郷里へ発ったのであった。
三
往来に雪解けの水蒸気の立つ暖かい日の午後、耕吉、老父、耕太郎、久助爺との四人が、久助爺の村に耕吉には恰好の空家があるというので、揃って家を出かけた。瀬音の高い川沿いの、松並木の断続した馬糞に汚れた雪路を一里ばかりも行ったところが、そのG村であった。国道沿いながら大きな山の蔭になっていて、戸数の百もあろうかというまったくの寒村であった。