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うんめいのままに
運命のままに
豊島 与志雄
「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页
然し私のその言葉は、寧ろ自分の頭が自分自身に浴びせかける言葉のように響いたのである。「あなたは余り何でも大袈裟にお考えすぎなさるからいけませんですよ。……私なんかそれは呑気に暮して居るのでございますよ。どうせ考えたってつまりませんから。」
私は春子さんに対しているのがつらくなった。私は自分の憂鬱で彼女の心を乱したくなかった。いやそれよりも誰からも離れて自分一人になりたかった。
私は友達と約束があるからと心にも無いことを云って、立ち上った。
「私も近いうちに英子をつれて一度国に帰りたいと思っております。おついでの時、お母様に宜しく申し上げて下さい。」それから彼女は追っかけるようにして云った。「静子さんのことはよく考えておいて下さいよ。」
私は春子さんの顔を見ることが出来なかった。
一人になると私は自分の心に驚いた。私のうちには何等の動揺もなかった。胸のうちが堅く引緊ったまま何も考えていない自分の姿を、私は他人をでも見るような気で眺めたのである。然し私はそのまま四谷見附から電車に乗って井の頭まで行った。私のうちには殆んど其処に行くという意志も選択も無かったのである。