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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

三

そしてその疲労の下から苛ら立たしい気持ちが湧いて来た。私はそれをぐっと押えつけて眼を閉じたまま、暫くの間机にもたれていた。

ある悪寒に襲われて眼を開くと、火鉢の炭火はもう白い灰になっていた。でそのまま立ち上って蒲団の中に倒れるようにもぐり込んだ。そしてほろろ寒い中に私は両手を胸に組んだ。

その翌日英子を訪ねると、彼女は橋本のうちに行っていて不在であった。

三

英子の手紙の数が次第に少くなって来た。先には私が手紙を出せばそれに返事をくれたものだったが、正月の末頃になると私の二本の手紙に対して漸く短い一通しかくれないようになった。然しそういう外的のことは私は容易に許し得たであろう。ただ私の心を最も淋しくさせたのは、その内容の変化であった。先にはよく愛に苦しむ心の響きを直接に伝えて来たが、その頃はただ霑いのない抽象的な文句の羅列のみが私の手元に届いた。彼女の心の響をそのままに捉え得る言葉は何も見出すことが出来なかった。

それでも私はやはり時々英子の家に訪ねて行った。然し私達の間には冷たい垣が何時のまにか出来ていた。英子は自分の内心をかばうような態度で私に接した。