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みちづれ

道連

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页

青空文庫

そして時々、その亡霊だかその臓腑を食った河童だかが、夜更けに通りかかる者をなやますのだそうだった。車を引いて通っていると、車が次第に重くなってくることがある。そいつが車に乗っかるからだそうだった。でその夜彼は僕と連れになって、或はそいつの化けたのじゃないかと疑って、初めは用心して口も碌に利かなかったが、愈々堰の近くへ来たので、一つためしてやれという気で小便をしてみた。化物ならば一緒に小便をすることはない。が人間ならば大抵一緒に小便をするというのだ。

「お前さんが小便をしてくれたで、わしも安心しただよ。」

そして彼は僕にいろいろ話しかけて、何処から来てどうして遅くなったかなどと聞いて、僕が尋ねようとしている友人の家を実はよく知ってるので、その家の前まで送っていってやろうと云い出した。どうせ化物に乗っかられる覚悟だったからと云って、その空車に乗ってゆけとも勧めてくれた。

僕は何だか狐にでもつままれたような心地がしたが、それでも気持は落付いてきて、杉の古木が七八本立並んでる物凄い堰のわきをも、大して恐ろしい思いをせずに通り過ぎた。

それにしても、夜道を連れ立って歩いていると、普通の人間である限りは、一人が小便をすればも一人も大抵小便をするというのは、一寸面白いじゃないか。