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みちづれ

道連

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页

青空文庫

すると、喫驚するくらい早く彼女はやって来た。それから足をゆるめて、膝の上にもたせた片手に下げてる提灯の方を見い見い、僕の顔は見ないで、少し震えを帯びた声で云い出した。

「あの……済みませんが、提灯の火を貸して下さいませんか。躓いたはずみに消してしまいましたので。」

そんなことだろうと前から思っていた、という気が僕はその時した。当り前のことのようにマッチを取出して火をつけてやった。そのぱっとした光で僕は初めて彼女の顔を見た。普通の……美しくも醜くもない顔立だったが、大きな束髪の下に浮出したその艶のない真白さが、何だか異様に感ぜられた。

それから僕達は、二人共めいめい提灯を下げて連れ立って歩き出した。

「何処まで行かれるんですか。」

「麓の町まで参ります。」

それだけで二人共黙り込んでしまって、提灯の火に足許を用心しながら、すたすた歩き続けた。道は真暗な木影にはいったり明るい月の光の中に出たりした。

そして一里ばかり行った頃、彼女は先刻躓いた足が痛むと云い出した。で僕は彼女の手を引いてやらなければならなかった。しまいには彼女の腕を取って、抱えるようにして歩いた。