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さけぬさんざ

避けぬ三左

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1941(昭和16)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,846 字 · 22 页

青空文庫

康政は身ぢかの者を呼んだ、「三左を余の馬へ乗せて、陣まではこんでゆけ、余は城乗りを見てもどる、傷の手当をよくしてやれ」そう云って、康政は前進していった。

三左衛門は陣へ運びもどされた。傷はふかでだったが、命だけはとりとめた。突き立った矢を抜きとる痛さはどんな傷の痛みよりも耐えがたいものだという、けれども三左衛門は眉をしかめもしなかった、それだけではなく、医者が二本めを抜こうとしたとき、「うまくやれよ、血がもったいないから」と云ってにやりとした、しかし手当が終ると間もなく彼は意識をうしなってしまった。

鷹巣城はひとたまりもなく落城した。三左衛門の不敵な仕方と、彼を討たすまいとして強襲を敢行したことが、はからずも功を奏したのである。殆んど無血に等しい勝ちであった。

「どうだ、傷は痛むか」明くる朝はやく、みまいに来た康政は三左衛門の枕近くへ寄って呼びかけた、「いやそのまま寝ておれ、命を儲けたと聞いてあんどしたぞ」

「かたじけなき仰せでございます、三左はただ……」

「あっぱれ避けぬ三左の名を見せたな、すさまじい武者ぶりであったぞ、けれども三左」康政はしずかに身をのりだした、「そのほうは少し考えちがいをしておる、避けていては戦にならぬという覚悟はよい、まことに戦う者の意気だ、なれども死に急ぎは勇士のすべきことではない、