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さけぬさんざ

避けぬ三左

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1941(昭和16)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,846 字 · 22 页

青空文庫

待っていた三人のうち、口髭をたてた一人の若侍は相手が近よって来るのを待ちかねて呼びかけた。

「やあ三左ではないか、いい天気だな」「…………」「富士がよく晴れている、すこし歩くと汗がでるぞ、なんといい天気ではないか」三左と呼ばれた相手は答えなかった。黙ってまっすぐ前の方を見ていたが、やがてむっとしたような調子でしずかに云った。「そこを通してくれ、拙者は嫁をもらいにゆくところだ」三人はあっと云った。

あっと云って眼を瞠っている三人のそばを、三左と呼ばれた男は大股に、悠々たる足どりで通りすぎた。彼はまっすぐにゆく。おなじ歩幅とおなじ歩調でゆっくりゆっくりあるいてゆく、どう見たって、「嫁をもらいに」という姿ではない、しかし、番町高辻へさしかかったとき、ちょっとした間違いがおこった。

それは辻へ出たとたんに、西からやって来た旅装の武士とばったり突き当ったのである。相手はどこかの大身らしく、槍をたて、供を四五人つれたりっぱな武士だったが、であいがしらに両方から突き当ると、そのはずみで、冠っていた笠がつるりと前へこけた。

「ぶれい者!」りっぱな武士はこけた笠をはねあげながら、まっ赤になって呶鳴りだした、「貴公はめくらか、当方は作法通りまがって来たのに、避けもせず真正面から突き当るという法があるか、めくらなら杖をついてある