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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
よしよし、ならば己れらが手は借りぬわ。高がこの殿の命一つ、平太夫が太刀ばかりで、見事申し受けようも、瞬く暇じゃ。」
こう申すや否や平太夫は、太刀をまっこうにふりかざしながら、やにわに若殿様へ飛びかかろうと致しました。が、その飛びかかろうと致したのと、頭だった盗人が、素早く白刃を投げ出して、横あいからむずと組みついたのとが、ほとんど同時でございます。するとほかの盗人たちも、てんでに太刀を鞘におさめて、まるで蝗か何かのように、四方から平太夫へ躍りかかりました。何しろ多勢に無勢と云い、こちらは年よりの事でございますから、こうなっては勝負を争うまでもございません。たちまちの内にあの老爺は、牛のでございましょう、有り合せた縄にかけられて、月明りの往来へ引き据えられてしまいました。その時の平太夫の姿と申しましたら、とんと穽にでもかかった狐のように、牙ばかりむき出して、まだ未練らしく喘ぎながら、身悶えしていたそうでございます。
するとこれを御覧になった若殿様は、欠伸まじりに御笑いになって、
「おお、大儀。大儀。それで予の腹も一先癒えたと申すものじゃ。が、とてもの事に、その方どもは、予が車を警護旁、そこな老耄を引き立て、堀川の屋形まで参ってくれい。