轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じゅうきちひょうりゅうきぶん

重吉漂流紀聞

久生 十蘭

「小説公園」1952(昭和27)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,456 字 · 52 页

青空文庫

一人が涙組めばみなそれについて涙を流す。重吉もたまりかねて甲板に上り、舷に額をあてて声を忍ばせて泣いた。

しばらくして表ノ間の座敷へ帰ると、まだやめずに愚痴をこぼしている。重吉ももてあまして、「泣くのはそれくらいにして、みなで初春の遊びをしよう。いまこの船に三十両ばかりの金がある。穴のあいた銭も七八把はある。港々の雑用に預った金だが、浦賀奉行と御判物と尾張様の御船印さえあれば、どこの津へ漂い着いても、雑用には事欠くことはないから、これを皆で分けることにする。おぬしらは、船頭の眼を眩まして淦水間へもぐりこむほど博打が好きなのだから、これで思うさま遊ぶがいい」

銭箱の底を叩いて金を分けにかかると、楫取の藤介が、

「やめてくれえ。たとえどれほど金銀を持っていたとて、水一杯買えるじゃない。勝負に勝ったとて、なんの楽しみがあるものか。そんなことは娑婆にいての話だ。それとも、このうちにそんな勝負でもしたいものがあるのかい」

とうわずった眼つきで一座を見まわすと、そんな阿呆がいるものかといい、誰一人とりあうものもない。重吉も仕様ことなく銭箱をしまい、船中の一同は心のなかにさまざまな愁いを抱き、こうして泣き悲しむがせめての心やりと、力なくうち臥しているばかりであった。