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のざらし

野ざらし

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,100 字 · 39 页

青空文庫

」

「そんなことを云ったって、」と禎輔が引取って云った、「佐伯君にもいろいろ都合があるだろうし、そう急に決心がつくものかね。」

昌作は、今度は自分が何とか云わなければならない場合だと感じたが、一寸言葉が見出せなかった。彼の心には再び、何とも知れぬ惑わしいものが被さってきた。実際先達てから、行くか否かの返事だけなりとも時枝へ出しておかなければならないと、しきりに昌作へ決心を強いたのは、そして、その晩までに返事をすると昌作に約束さしたのは、禎輔自身だった。所が今急き込んでるのは達子だけで、禎輔自身はどうでもよいという投げやりの態度を取ってるのだった。その投げやりの態度の底に何かがあるのを、昌作は不安に感じた。殊にこれまで、また今後とも恐らく、自分の親戚として且つ保護者として、そして寛大な真面目な人格者として、禎輔を尊敬していただけに、昌作は猶更それを不安に感じた。

「私は今一寸気持に引掛ってることがありますから、」と昌作は突然云った、「それが片付くまで……もう四五日、待って頂けませんでしょうか。」

「ああゆっくり考えるがいいよ。今じゃなんでもないが、九州へ行くと云えば昔では……。