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のわき

野分

夏目 漱石

一个直言不讳的文学老师,在乡村中学碰了一鼻子灰。理想撞上现实的台风,他还能像野分一样坚持自我吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 页

青空文庫

深い碧りの上へ薄いセピヤを流した空のなかに、はっきりせぬ鳶が一羽舞っている。雁はまだ渡って来ぬ。向から袴の股立ちを取った小供が唱歌を謡いながら愉快そうにあるいて来た。肩に担いだ笹の枝には草の穂で作った梟が踊りながらぶら下がって行く。おおかた雑子ヶ谷へでも行ったのだろう。軒の深い菓物屋の奥の方に柿ばかりがあかるく見える。夕暮に近づくと何となくうそ寒い。

薬王寺前に来たのは、帽子の庇の下から往来の人の顔がしかと見分けのつかぬ頃である。三十三所と彫ってある石標を右に見て、紺屋の横町を半丁ほど西へ這入るとわが家の門口へ出る、家のなかは暗い。

「おや御帰り」と細君が台所で云う。台所も玄関も大した相違のないほど小さな家である。

「下女はどっかへ行ったのか」と二畳の玄関から、六畳の座敷へ通る。

「ちょっと、柳町まで使に行きました」と細君はまた台所へ引き返す。

道也先生は正面の床の片隅に寄せてあった、洋灯を取って、椽側へ出て、手ずから掃除を始めた。何か原稿用紙のようなもので、油壺を拭き、ほやを拭き、最後に心の黒い所を好い加減になすくって、丸めた紙は庭へ棄てた。庭は暗くなって様子が頓とわからない。