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ぎんのつえ

銀のつえ

小川 未明

「童話」1924(大正13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,721 字 · 8 页

青空文庫

彼は、さびしい、広い往来を歩いてきますと、ふいに、そこへわき出たように、一人のおじいさんがあらわれました。そのおじいさんは、白いひげをはやしていました。そして、手に光るつえを持っていました。そのつえは、銀で造られたように思われます。

おじいさんは、彼の歩いている行く手に立って、道をふさぎました。彼は、頭を上げて、おじいさんを黙ってながめたのです。

おじいさんは、なにか、ものをいいたげな顔をしながら、しばらく、口をつぐんで彼のようすを見守っていました。彼は、このおじいさんを見ると、なんとなく体じゅうが、ぞっとして、身の毛がよだちました。おじいさんの目は、氷のように冷たい光を放って、刺すように鋭かったからであります。

それよりも、彼は、このおじいさんを、かつてどこかで見たことがあるような気がしました。子供の時分にきいたお伽噺の中に出てきたおじいさんのようにも、また、なにかの本に描いてあった絵の中のおじいさんのようにも、また、彼が音楽を聞いている時分に、頭の中で空想したおじいさんのようにも、……であったかもしれなかったのでありました。

「おまえは、私を見たことがない。