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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控 鬼の面』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 页

青空文庫

五

平次にそう言われると一言もありません。

五

湯島の天神下にかかると、

「あの晩仲裁に入った、国府弥八郎様のお屋敷は此辺じゃないか」

「直ぐ其処ですよ」

「ちょいと寄って見よう」

平次は良いところに気が付きました。

国府弥八郎は小禄ながら聞えた御家人で、四十年配の分別盛りを、道楽と洒落っ気で暮して居る武家でした。

「平次親分か、――よく来てくれた、まァまァ寛ろいで、ゆっくり話して行ってくれ」

などと友達付き合いで如才もありません。

「実は、あの晩――吾妻屋の毒酒の果し合いの時の様子を、詳しく伺い度いのですが」

平次は早速要件に入りました。

「良いとも、どんな事を話せばいいのだ」

「徳利はたしかに二本出たのでしょうね――三本では無く」

「その通りだ、その前の酒は燗の良いのであったが、果し合いの酒は、白伊万里の徳利に入れた冷酒が二本、――吾妻屋がわけを話して、果し合いを申出ると、大井氏はさすがに驚いたらしく、暫くは睨み据えて口もきかなかったが、隣の部屋で内儀のお染殿が、自害しようとする気配を聴くと大井久我之助殿、サッと顔色を変えて、二本の徳利のうち、吾妻屋の方に寄った遠いのを取上げた」