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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

馬鹿馬鹿しくてやれるものじゃありません」

「じゃ、日本は負けっぱなしですか?」

「神の言に『復讐は我に在り、我報ゆべし』とあります。地上の戦争の勝負とは別に、神の目から見て不正義のほうを神が罰し給うのみ。復讐という問題はわれわれの範囲ではありません」

「それじゃ、僕らの生きてゆくこれからの道はなんですか?」

「それを発見するために、私はこうしてこの壕舎に座って考えているのです。なかなか見つかりません」

「僕もどこかで静かに考えるかな」

「山に入って考えなさい。世の渦の中にいると、くるくる回るばかりでついに自分の道を見いださずに、わいわい騒ぐだけの人間になりますよ。青山元不動、白雲自去来、私はいつもあの三ツ山を仰いで黙想をつづけています」

客は心機一転して去る。壕舎はしばらく森閑となる。五歳の茅乃が独りしゃべっているのが聞こえる。出てみると、吹きさらしの焼け跡の石の上に瓶や皿や鏡のかけらなどを並べ、人形の首を相手にままごとをしている。友だちはみんな死んでしまった。

「茅ちゃんのおうちは大きかったわね。二階があったねえ、母ちゃんがいたね。お饅頭つくって茅ちゃんに食べさせたわねえ。