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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

爆撃直後の情景

そのあとへ、しゅうとうなって火の玉の雨が降ってきた。その一つは足にあたった。そこで白煙をあげて消えたが、パラフィン蝋燭を吹き消した後のような匂いがした。この火の玉であちらこちらに火事が起こった。

爆撃直後の情景

大学は爆弾破裂点から三百メートルないし七百メートルの範囲に建物を並べていた。まず爆心圏内にあるとみてよい。基礎医学教室は、爆弾にも近かったし、木造だったから瞬間に押し潰され、吹き飛ばされ、燃やされて、教授も学生も皆死んだ。臨床医学教室のほうは、少し遠かったのとコンクリート建だったために、運よく生き残った者もいくらかはいた。

時計は十一時を少し過ぎていた。病院本館外来診察室の二階の自分の室で、私は学生の外来患者診察の指導をすべく、レントゲン・フィルムをより分けていた。目の前がぴかっと閃いた。まったく青天のへきれきであった。爆弾が玄関に落ちた! 私はすぐ伏せようとした。その時すでに窓はすぽんと破られ、猛烈な爆風が私の体をふわりと宙に吹き飛ばした。私は大きく目を見開いたまま飛ばされていった。窓硝子の破片が嵐にまかれた木の葉みたいにおそいかかる。切られるわいと見ているうちに、ちゃりちゃりと右半身が切られてしまった。