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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
目にみえぬけれども少しずつ少しずつ原子野は復興しつつある。確固たる信仰に生き、苦しむこと、泣くことの幸福を知るわずかな人々が、ここで今、世紀の罪滅ぼしの苦業をしているのだ。信仰なき人は帰ってこない。この原子野復興の原動力となっているものは信仰のみである。
夜は灯がないから、早くから子供を抱いて毛布にくるまっている。
「原子ってどのくらいの大きさね?」四年生の誠一が尋ねる。
「とても小さいものだ。球の形をしているものとすれば、その直径は約一億分の一センチだね」
「わあ、目には見えんね、顕微鏡でも見えん。それは粒なんだね」
「いや粒じゃないよ。太陽の回りを地球や土星などがぐるぐる回っていることを学校で先生に聞いたろ。あの太陽系全体の直径で太陽系の大きさを見当つけるように、原子も固い粒じゃなくて、中心に原子核があって、その周囲を陰電子がぐるぐる回っている。その陰電子の走る道の直径が一億分の一なんだ。それと核との間はがらんどうで何もない。核の直径は原子の直径のさらに十万分の一という小さいものなんだ」
「核ってどんなもの?」
「葡萄の中に種が集まっているだろう。あんなものさ。