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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

内科の病棟には全身の急性関接リューマチスの患者がいて、大倉先生と山田君とが抱いて出ようとすると、痛い痛いとわめきだし、そんなに痛い目にあわすのならこのままおいといてくれといった。仕方なく他の患者から運び出して、とうとう最後にこのリューマチスだけになった。もう一度抱きかかえると、担架でなけりゃ嫌だと駄々をこねる。二人はあちこち捜し回るけれども、役に立つ担架は一つもない。だいぶん時間を費やして、仕方がないからとさらに病室へ行ってみたら、そこにはもう火炎がまいていた。大倉先生は私の所に駆けつけて、「一人だけどうしても出ません」と訴える。私は「それだけ尽くしたらもういいです。その患者の責任は私が負いましょう」といった。しかし大倉先生と山田君とは、人殺しをしたような顔をして、炎の舌の舞うあの病室を見上げている。

腕時計はすでに二時を回っていた。いつのまに三時間もたったのだろう。火炎は今が最も盛んである。風はさっきから西風だった。何十メートルの炎が見上げるばかりの大空にお互いに高さを競い、風に押されては東へ崩れかかる。大学は町の風下になっているので、このコークス置き場も危険になった。