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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

応酬ごとにひと笑いして、路はいつしかはかどっていた。

夕月が淡くかかっている。「日暮れて道遠く」清木教授がひとりごとをいった。その時、さっきから具合の悪かった私の右脚が痙攣を起こした。私はどたりと路の上にひっくり返った。みんな集まって盛んにマッサージをやってくれる。月は次第に傾き、あたりはいよいよ暗くなった。人は通らない。藤ノ尾まであと三キロ。三十分もしたら筋肉は柔らかくほぐれた。私は豆ちゃんの肩に支えられて、ことりことりと歩を運ぶ。一キロ行ったら豆ちゃんが弱りこんでしまった。そこで豆ちゃんを樽ちゃんと大石君が腕組みして助け、私は長老におぶさった。

高見さんの家まで一同やっとたどりついて一息入れる。小母さんが、「まあまあ、こんげん遅くまで」といいながら、すぐに夕飯を並べてくださった。もう遠慮などできる胃の腑ではなかった。むせたり、咳こんだり、まるで小犬のように、ご飯と南瓜と馬鈴薯と梅干とを口の中に投げこんだ。

十五日。聖母被昇天の祝日で、木場天主堂(現在の三ツ山教会)では早暁のミサが立てられていたが、爆音がすでに空を掠めたので式は途中で中止となり、清水神父様は聖体を急いで裏の防空壕に奉遷した。