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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

目を射るほどの光輝はなく、ストロンチウムを大きな提灯の中で燃やしているような真っ赤な火の玉だった。それがすーっと地面に近づく。なんだろうと眼鏡に片手をかけて見直す瞬間、すぐ目の前にマグネシウムを爆発させたと思われるばかりの閃光が起こり、身体が宙に浮いた。……水田の中に、これもまた吹き飛ばされた自転車の下敷きとなっている自分に古江さんが気づいたのは、何時間か後であり、一方の目はすっかり盲目になっているのを知った。

浦上から七キロ離れた小ヶ倉国民学校の職員室で、田川先生は防空日誌に今朝の警報記事を書きこんでいたが、ちょっと顔をあげて窓の外へ目を休めた。目の前に小さな山裾があって、その上に長崎港の空が青かった。その青空が瞬間さっと輝いたのである。その光は鋭く眼を射た。真夏の真昼間の太陽の明るさがその次の瞬間にひどく暗いものに感じられたのだったから、この光度は太陽の何倍かであったにちがいない。昼間に照明弾とはこれいかにとつぶやいて田川先生は腰を浮かしたが、突然異様な物を認めた。「あれ、あれ、あれ、なんだろう」田川先生の叫びに職員室じゅうの先生がたは窓へ走り寄った。