轻松读懂日语经典作品
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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1928(昭和3)年8月増刊~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 页
その時君は主人に勧められて、グラスに半分ばかり葡萄酒を喫した。その葡萄酒は口をあけたばかりのもので、コルクの小片がグラスに入ったのを、君は指でつまみ出した。晩酌が終るとすぐ女中に命じて二つの床をのべさせ、両人上厠の後就寝した。それから十一時まで両人とも眠らず。君が再び君の寝床に横わった時君の家のおくれたボンボン時計が十一時を報じた。
君はこの汽車の時間表の様に忠実な記録を読んで、恐怖を感じないでいられるだろうか。
二月三日深夜復讐者より
我が生涯より恋を奪いし女へ
「わたくし、大江春泥という名前は可也以前から存じて居りましたけれど、それが平田一郎の筆名でしょうとは、ちっとも存じませんでした」
静子は気味悪そうに説明した。事実、大江春泥の本名を知っている者は、私達作家仲間にも少い位であった。私にしても、彼の著書の奥附を見たり、私の所へよく来る本田が本名で彼の噂をするのを聞かなかったら、いつまでも平田という名前を知らなかったであろう。それ程彼は人嫌いで、世間に顔出しをせぬ男であった。
平田のおどかしの手紙は、その外に三通ばかりあったが、いずれも大同小異で、(消印はどれもこれも違った局のであった)復讐の呪咀の言葉のあとに、静子のある夜の行為が、細大洩らさず、正確な時間を附加えて記入してあることに変りはなかった。