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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

と哀訴されたこともある)といったぐあいで、そうなると彼としては恐縮し閉口し、こちらからあやまって身を退く、ということになるのであった。

主家を去るときはかなりな旅費を持っていたが、三年めにはそれも無くなり、やむなく町道場などで賭け試合をするようになった。これは断然うまくいった。向うが応じて呉れさえすれば間違いなく勝つし、ときには莫大な金になることもあった。しかしやがて妻に気づかれ、泣いて諫められ、今後は絶対にしないという誓いをさせられたのである。

云うまでもない、たちまち窮迫した。

――わたくしも手内職くらい致しますから、どうかあせらずに時節をお待ちあそばせ。

おたよはそう云い始めた。彼女は九百五十石の準老職の家に生れ、豊かにのびのびと育った。それが馴れない放浪の旅の苦労で、躯も弱り、すっかり窶れてしまった。伊兵衛はその姿を見るだけでも息が詰りそうになる。身もだえをしたいほど哀れになるので、内職などと聞くと震えあがって拒絶した。とんでもない、それだけはあやまって、代りに彼自身が一文あきないを考えた。

あきないといっても定ったものではない。弥次郎兵衛とか、跳び兎とか、竹蜻蛉、紙鉄砲、笛など、ごく単純な玩具を自分で作ったのや、季節と場所によっては小鮒や蟹、蛙などという生き物を捕って、もっぱら小さな子供相手に