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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

五

五

青山邸では酒肴のもてなしを受けた。

相客はなく、主膳と二人だけで、林という若い家士が給仕をした。老職というがどのくらいの身分であるか、ずいぶん広大な構えだし、客間から見える中庭の樹石も、尋常よりは凝ったもののようであった。

主膳は朝の出来事には触れず、礼を述べるとすぐに伊兵衛の手腕を褒めだした。

「実は道から拝見していたのだが、かれらも相当に腕自慢なのだが、まるで子供のようにあしらわれたのには一驚でした、失礼だが御流儀は」

「はあ、小野派と抜刀をやりました、しかしもちろんまだ未熟でして」

「無用な御謙遜は措いて、それだけのお腕前をもちながら浪人しておられるには、なにか仔細のあることと思うが、もし差支えなければお話し下さらぬか」

「それはもう、仔細というほどのことはなし、まるでお笑い草のようなものですが」

伊兵衛は身の上のあらましを話した。習慣として旧主家の名はそれとは云わない。ほのめかす程度で相手も納得するわけであるが、彼の話しぶりの謙譲さが、内容の不明確さを補ったとみえ、浪人した理由も、その後の任官がうまくいかなかったわけも、主膳にはおよそ理解がついたようであった。