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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

よほど威勢のある人とみえ、このひと言でみんなはっとし、すなおに争闘をやめた。御老職といわれたその中年の侍は、ぐっとかれらを睨みつけ、すぐに伊兵衛のほうへ来た。「何誰かは知らないがよくお止め下すった、私は当藩の青山主膳と申す者、厚くお礼を申上げます」

「はあ、いやとんでもない」

もちろんさし上げていた刀は下ろしていたが、彼は例によって恐縮し、赤くなった。

「――却って私こそ失礼なことを致しまして、みなさんをすっかり怒らせてしまいまして」

「血気にはやる馬鹿者ども、さぞ御笑止でございましたろう、失礼ながらそこもとは」

「はあ、三沢伊兵衛と申しまして、浪人者でございまして、向うの川へ釣りにまいったのですが、こちらが危ないもようだったものですから、つい知らずその、こういうことに」

「当地に御滞在でいらっしゃるか」

「追分の松葉屋という、いやとんでもない、どうかあれです、私のことなど決してお気になさらないように、ほんのなにしただけですから」

彼は刀をそこへ置き、おじぎをしながら後退した。

「――どうかお構いなく、妻が待っておりますし、借りた釣り竿も放りだしたままですし、失礼します」